『隷属なき道』から学ぶこと

本&映画の紹介

こんにちは、ぽこブログです

今回は、ルトガー・ブレグマン著の
『隷属なき道 AIとの競争に勝つ ベーシックインカムと一日三時間労働』
を紹介していこうと思います

まず、この本に書かれていることを簡単にまとめますと、

過去二世紀の間に、世界経済は約250倍に膨らみ、平均寿命は1900年の倍以上、飢える人も格段に減少した。
中世の人々からみれば、夢見た“ユートピア”そのもののように思われる現代だが、より良い世界(=次のユートピア)を思い描くことができないため、閉塞感に苛まれている。
つまり、資本主義によって現代の“ユートピア”を手に入れたのは確かだが、それだけでは維持していくことは難しく、私たちは生活の質を上げる別の道をみつけなけらばならない
そこで、この現状を打破する手立てとして著者が掲げているものが

  • 自由に使える無償のお金を配ること(ベーシックインカム
  • 労働時間の短縮(週15時間労働
  • 国境線の開放(労働の国境を開くことで56兆ドルもの富が生み出される)

の3点である。

…ということです。
なんだか難しく感じますよね。

今回はこの3点について、わたしなりの解釈でわかりやすく伝えていけたらな、と思っております

ベーシックインカムについて

そもそもベーシックインカムとは?

本書では、ベーシックインカムの説明として、生活保護や母子家庭手当、奨学援助等、すべての福祉プログラムを辞める代わりに、全国民に(例えば)年間一律150万円を給付する制度、とあります

ベーシックインカム制度を採用する利点として、まず、貧困は個人のIQを13ポイントも低下させるという問題が背景にあります

つまり、貧しい人のために教育や福祉プログラムに投資しても、そもそも貧困層はそれらのプログラムを申し込まないのです

結論、政府はお金を投資する矛先を間違っているわけですね

そこで、ベーシックインカムとして、個人に一律の自由に使えるお金を与えるのです

貧困層にお金を渡してもうまく使えるのか

ここで問題になってくるのが、
「貧困層の人々にお金を与えたところでろくな使い方はできないのではないか?」
ということです

結論から言うと、この問いに対する答えはNOです

例えば、2009年ロンドンで行われた試験では、13人のホームレスの男性にフリーマネー(自由に使えるお金)として3000ポンド与えた結果、1年半後には13人のうち7人は屋根のある生活をしており、またその他2人は、アパートに移ろうとしている段階だった、とあります。
それに彼らは、1年で平均800ポンドしか使っていなかったという、とても倹約家だったのです。

つまり、彼らは彼ら自身が一番必要としているものをよくわかっており、お金が彼らに未来を選択する権利を与えたのです

また結果として、フリーマネーはかなりのコスト削減にもつながりました(従来は市の行政サービスや慈善団体に多額の費用が掛かっていたため)

このような試みが世界各地で行われ、貧しい人々はお金を無駄にしない、ということが証明されています。なぜなら、自分にとって必要なものを買うために使えるからです

さらに、アルコールやたばこの消費量の減少、家庭内暴力の減少、メンタルヘルスの悩みも減ったという結果も出ており、結果として、ヘルスケアにかかる公共支出の減少につながるという利点もあります

ベーシックインカムの有用性まとめ

つまり、ベーシックインカムの有用性をまとめると、

  • 貧しい人々にまとまった一律のお金を与えるは、彼らが貧困から抜け出す大きな一歩につながる
    ⇒なぜなら、彼らは自分がなにを必要としているのかを自分自身が一番よく理解しているので、お金を無駄なく使えるから
  • メンタルヘルスの悩みが減少し、結果としてヘルスケア公共支出削減という財政的意味がある
  • 生活保護という複雑な社会保障制度よりも、(ベーシックインカムは)人々に公平

ということです

ちょっぴり考察&小話

お恥ずかしい話、本書を読むまではベーシックインカムという言葉は知っているけど、意味を深く理解できていないという状態でした


わたしの中で、ベーシックインカムの有用性をすっと理解できたたとえ話がありまして、


たとえば、恋人から誕生日プレゼントをもらうとするとき、ロマンス性に欠ける云々は置いておいて、現金をもらった方が役に立つとは思いませんか?
(何が欲しいかあらかじめ相手に伝えている場合は別です。それと、あくまで、“うれしい”ではなく“役に立つ”です。ご留意ください。)


何が欲しいのかは自分自身が一番よくわかっているものですからね( ˘ω˘ )

労働時間の短縮について

ケインズの予想:2030年には人々の労働時間は週15時間になる

1930年、経済学者ケインズは
「2030年には人々の労働時間は週15時間になる。21世紀の最大の課題は増えすぎた余暇だ」
と予想しました

事実、第二次世界大戦後までに着実に余暇は増え続けましたが、1980年代にその減少傾向は止まりました。これには女性の解放が大きく関わっていると考えられます。

ケインズの予想通りならば、余暇による倦怠感や退屈が蔓延しているはずであった現代は、働くことのストレスと不安定さをかかえているのです。

労働時間を減らすにはどうすればよいのか?

様々な世論調査によれば、労働者は
“購買力をいくらか手放しても、余暇を得たい”
と思っているということがわかっています。
(例えば、「2週間分の給与上乗せか、2週間の休暇どちらを選ぶか」という質問に対し、後者を選ぶ人が2倍多かった)

ではどうやって労働時間を減らすのか。まずは仕事を減らすことを政治の理念として復活させなければなりません。

お金を時間に変えて、教育により投資し、退職制度を柔軟にして徐々に労働時間を減らしていくことが必要なのです。

ちょっぴり考察&小話

この話題の中で取り上げなかったのですが、考えさせられたことがありまして、それは、給与の低い凡庸な仕事が重要な役割を果たしている一方で、給与の高い仕事は特に有用とはみなされていない、という点についてです。
中でも興味深い言葉が、
『優秀な人材が富の創造ではなく、富の移動に投資されてきた』
(何も生産しなくても、富を得られ、稼ぎが良いのだから、結果的に価値あるものを生み出していると錯覚してしまうというもの。)
という皮肉めいたものです。

たとえば、ごみ収集作業員がストライキを起こし、ごみの収取がストップしたら、町はたちまちごみだらけになってしまい、想像しただけでも大変なことになってしまうのはわかりますよね。
一方で、銀行がストライキを起こしても、経済は機能し、ましてや経済成長も止まらないのです(アイルランドの実例より)。

富を創造する仕事(=一般的に大変で、儲からない)に優秀な人材が就かず、
富を移動させる仕事(=意味も重要性もないが、儲かる仕事)にばかり就くようになったため、生産性と革新性は低下してしまったのです。

この悪循環を打破し、有益な仕事をする人が増えていれば、すでに空飛ぶ車も発明されていたのかもしれませんね。

労働の国境線の開放について

AIに中流階級の仕事は奪われてしまう

産業革命の時代に、織物工は上記期間によって仕事を奪われました。
そして現在、第二次機械化時代になり、AIとロボットが中流階級の人々の仕事を奪うことになります。新世代のロボットは、人間の筋力だけでなく、知的能力をも代行するようになるのです。

コンピュータは、2045年には全人類の脳の総計より10億倍賢くなり、さらに機械の計算能力の成長には限界がないと言われています。


今後は、ベトナムやバングラデシュの労働搾取工場さえ、ロボット労働者によるオートメーション化が進むとされています。
つまり、機械にはできない技術を習得しなかった人、習得できない人は、次第にわきに追いやられていくのです。

世界の貧困を一掃する最良の方法、『開かれた国境』

退廃的なユートピアに思想を巡らせるだけでなく、この時代の最大の課題である、『地球上のすべての人に豊穣の地の喜びを提供する』ということに取り組むべきではないか?

そこで、この問題に対する有効打として掲げられたのが『開かれた国境』です。
人以外の物だけでなく、誰に対しても(知識労働者、難民etc)すべての人々に対して国境を開くべきなのです。

現代は、コンピュータとコンテナの出現により、様々な品物やサービスや資金がかてないスピードで世界中を回るようになりました。
つまり、世界はだんだん縮小していったのです。
このように、“モノ”の国境は開かれているのに、皮肉にも“人”の国境は(数十枚のビザの申請、数百のセキュリティチェック、数えきれないほどのボディチェック等)閉ざされたままなのです。

国境は最大の差別をもたらす要因であり、国境が開かれることで富の再分配が可能なのです。(なぜならば、世界の富のほとんどすべてが全人口のうちごく一部の国、人々に分配されているため)

わたしたちにできることは、多額の費用を発展途上国の支援につぎ込むことではなく、移民を受け入れる体制をと整えるという、少し国境を開くことではないでしょうか。

感想

本書を読んだ率直な感想は、“ちょっとむずかしいな”でした。
でもそれは、私は日本という豊かな国(本書でいうなれば豊穣の地に分類される)に生まれまたがゆえに、気にすることなく生きてきたからだと思います。

本書では実に多数のデータをもとに詳しい実例を挙げてわかりやすい説明がなされています。特に私は、ベーシックインカムについてほとんどゼロの状態からでしたがすごく勉強になりました。

また、全11章から構成され、各章最終ページに箇条書き形式でまとめのページがあり、このまとめが実に端的にまとめられていてわかりやすいです。
もし、本書を読んでみたいが、全文をいきなり読むことに抵抗があるという方は、まずこのまとめから読み、気になる項目があれば本文に戻り深く読んでみる、という読み方もおすすめです(わたしももう一度本書を読みなおすことがあれば絶対この読み方をします)

以上、『隷属なき道』の要約でした。

ここまで読んでいただきありがとうございました!
少しでもどなたかのお役に立てたなら光栄です☺

おしまい

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