突然ですがみなさんは、“すてきなおじさん”はお好きでしょうか?
今回は、わたしの大のお気に入りの一冊である、金井真紀氏著の『パリのすてきなおじさん』をご紹介していきたいと思います!
この本に、おしゃれなおじさんをはじめ、アートなおじさんや、いまを生きるおじさんなど…パリの街中で見つけたたくさんの“すてきなおじさん”の生き様が詰まった一冊です
✏︎この記事で紹介していること✏︎
- 『パリのすてきなおじさん』レビュー
- 見所紹介!
→“すてきなおじさん”の”すてきな生き様&考え方”
→ちょっと小話
この本はほんとにほんとにおすすめの一冊です…!!
特に、読んで欲しい方としては、
- 海外特有の自由な考え方・暮らし方が好きな方
- 自分を持った生き方に憧れる方
- 世界中の価値観に興味のある方
は絶対ハマること間違いなしです…!!
『パリのすてきなおじさん』レビュー
まずは『パリのすてきなおじさん』のレビューを五つ星で紹介していきます!
内容:★★★★★
内容がとっってもいい!好き!!まず、本屋さんの棚にずらりと並ぶ数ある本の中で、ポンと目に止まった本の題名。
『え、おじさん?…ん?”パリのすてきな”…か。なんかすてきそうじゃん??』
そして手に取ってパラパラみて確信。
『あ、わたしが好きな本だ』
この本には、著者である金井真紀さんと、その案内係である平岡裕児さんが、パリの街中でふと目に止まった“すてきなおじさん”に声をかけ、そのおじさんたちのお話がまとめられたもの。
バリバリ働くビジネスマンから、ゆったりと自分の好きなことに情熱を捧げるアーティスト、はたまた迫害を受けた過去を持つユダヤ人や、難民申請中のアフリカ人など。移民や難民が多く暮らすパリだからそこ、さまざまな“すてきなおじさんたち”の温床なのです。
わたしはこの一冊に出会って、
- 日本とは違う、海外特有の自由で大らかな考え方
- 移民・難民など多種多様な人々が暮らす土地ならではの生き方の多様性
に触れることができました。
街中の“そこらへんにいるおじさん”からこのようなたくさんすてきな話が聞き出せるのも、著者の人を見る目の良さと、魅力あってのことなのだなと尊敬します。
読みやすさ:★★★★★
一節がおじさん一人一人に区切られているため、短編でとても読みやすかった!
そして何より、小説ではないのに、小説のような。おじさん一人一人の生き様という、小説のようなストーリーが続くので、『次の人はどんな話が待ってるだろう?』『この人の考え方、憧れる!』と次々ページをめくってしまいました
憧れ度:★★★★★
著者の行動力に強い憧れを持ちました
パリという日本から遠く離れた街で(しかも著者自身はフランス語が話せない)、自身の“選おじさん眼”(『このおじさんの話を聞いたら面白そう』という勘があるそう)と好奇心を持っておじさんを探し、話を聞く…
パリというさまざまな人種、考え方の宝庫で、ひたすら『おもしろそう』だと感じたおじさんに声をかけて話を聞く…ちょっとこわそうだけど、日本では絶対に体験できない貴重な経験ができそうで、『いつか自分も海外の街でそんなことができたら…』という夢を感じた作品です
すてきなおじさんの、すてきな生き様&考え方
本書は6つの種類のおじさんたち(章)にわかれており、
- おしゃれなおじさん
- アートなおじさん
- おいしいおじさん
- あそぶおじさん
- はたらくおじさん
- いまを生きるおじさん
という分類になっています
ここからは、そんな“すてきなおじさん”たちのお話の中でわたしが特に“すてきだ”と感じた5人のおじさんのお話をご紹介していきます!
悲しみを癒すために絵を描くおじさん
こちらは、パリの午後の路地で出会ったイヴ・ロージンさんのお話です
彼は現在は画家をしており、その前は20年間ピアニストをしていたそう
そんな彼は、32歳のときに妹を亡くし、悲しみを癒すために絵を描き始めたという
彼の作品には、ベースには白と黒があり、彼自信が“白と黒”に特別な思いがあるそうで、というのも“白と黒”に対する西洋と東洋の考え方の違いにある
西洋は、白と黒とは対立する概念だといい、白は善、純粋、天国…黒は悪、不純、地獄…いずれの考えにせよ、白が優れていて黒が劣っているという考え方
一方で東洋では、白と黒は保管し合う関係にある。白と黒、つまり陽と陰、その二つが揃って世界が形作られる。どちらが上でも下でもない。
…確かに。
『とにかく調和が大事。対立からはなにも生まれない』
彼のお話から、初めて”白と黒”に対して西洋と東洋とでそんな価値観の違いがあったことを知りました。
若いわたしが考えもしないことを、様々な経験から考え、発見していく…人生の先輩であるおじさんならではの考え方に感服した、わたしが一番すてきだと思ったお話です
リアル版:服を10着しか持たないおじさん
『フランス人は10着しか服を持たない』という有名な本と同様、いつ会っても同じ服を着ていて、それでいてなんだかおしゃれなおじさんこと、セバスチャン・ドダールさんのお話です
そんな彼のモットーは、
『ぼくは人生をシンプルに考える』
『2分考えれば済むことを、みんな大げさに考えすぎだよ。』
服を選ぶときに限らず、どうでもいいことに悩んだり、小さなこともドラマチックに捉えがち。そんなのは時間の無駄だと考えるそう
これは元々からの考えだそうですが、この考え方に拍車をかけた出来事が、2015年のパリ同時多発テロの経験だったという
人生は予想外のことが起きる。そして限りがある。だからこそ本質的なことだけに目を向けるべき。
『いつも同じ服をきるおしゃれ』には、過去の経験により一層強くなった『シンプルに捉える』という考え方が根底にあるんですね
地球上のどこに行ってもくつろげるおじさん
モンマントルにあるこじんまりとしたギター工房で働く、ギターが大好きなスペイン生まれのリベルト・プラナスさんのお話です
彼は7歳の時にギターを弾き始め、以来地元スペインのアルメニアで弦楽器職人の見習いになり、さまざまな土地を渡り歩き、世界中からギターの注文と演奏会の依頼が来るそう
『ぼくはねえ、どこにいても自分の家にいる気持ち。昔からそう。』
そんな彼は、『なぜスペイン生まれなのにフランスにいるのか』と尋ねられると、決まってこう答えるそう
『ぼくは地球生まれだから』
みんな同じ球の中に住んでるんだから、隣人を尊重しないといけない。彼自身が信じる宗教はないけど、周りのみんなの信仰は尊重するという
どこの国の人もみんな同じ“地球”に暮らしているのだから、争い合うなんて論外で、自分とは違う人たち(国、人種、宗教…)を尊重している彼だからこその考え方ですね
深い…
下町の最後の彫金師のおじさん
ベルヴィルという下町でシズラー(彫金師)をする、MOF(国家最優秀職人賞)とepv(無形文化財企業)の称号を持つフラデリック・モレルさんのお話です
シズラーの仕事として、名家のお宝や美術館の収蔵物を預かって、傷ついたところを補修したり、欠損した部分を復元したりして、完成時の状態に戻すことが彼の仕事
そんな彼は、若い頃は国立造幣局で勤めていたそう
『10年経って、気づいたら、おれより技術のある人間が周りにいないのよ。それで、もういいや、やーめたって』
国立造幣局時代は月給4,000ユーロ(やく50万円)もらえていたにも関わらず、
『金のためにこの仕事をしてるわけじゃねえ』
と技術の向上だけを追求し、独立して工房を買い取り、『自分の場所』を作り上げたそう
そんなシズラーの仕事は、今では3Dプリンタでの復元でも成り立つことや、職人の高齢化もあり、絶滅まで時間の問題だという
機械で早く、安くできる時代にも関わらず、彼は納得できる仕事しかしたくない、と時間をかけて仕事をしたい意思があるため、『早く済ませて次の仕事をしろ』という儲け主義の骨董品屋が大嫌いだという
“金のために仕事をするのではない”という彼の信念が、素晴らしい職人仕事を支えているのです
頑固な職人気質…すてきですね…
なんでも機械で安くできてしまう現代でも、このような職人気質な人たちが残っていってほしいものですね…
マリからの出稼ぎで丁寧な仕事をこなすおじさん
西アフリカのマリからパリに出稼ぎに出てきて36年、内現在は17年間オフィスのコンシェルジュをしているシビー・ムハンマドウさんのお話です
20歳でパリに出稼ぎに出てきて、マリには家族が待っているという
しかし、これからもパリで過ごそうと考えているそう
というのも、これには彼の基本的な考え方に通ずるものがありそうで、そんな彼の考え方というのが、
『出身地や共同体で人を一般化してはダメ。この国の人はこういうタイプ、なんていうものは全部ウソなんだから。』
さまざまな国の人々の住むパリで、コンシェルジュという人と接する仕事をする彼だからこその考えだといえます
そんな考えを持つからこそ、『出稼ぎに出てきて家族に会えないのはかわいそうだ』などというステレオタイプな考え方は、彼の人生には通用しないのかもしれません
どこの国の人はどういう人、というのではなく、どこにだっていいやつも悪いやつもいる!ということです
合間合間の小話がためになっておもしろい!
すてきなおじさんのすてきなお話はもちろんですが、本書の見所は他にもあります!
それが、合間合間に挟む、案内係の広岡さん(パリを熟知している)によるパリについてのためになる小話と、著者金井さんの気づきです
- アルジェリアとフランスとの関係
- おいしいワインの組み合わせ
- 移民・難民について
なかでもわたしがおもしろいと思った話が、パリのワイン事情について
パリのおじさんとお話をする際に、お昼時であれば、『じゃ、ランチしながら…』となるそう
そこで必ず、『ワインどうしますか?』となるそうです
平日の真昼間からワインを嗜むなんて日本じゃ考えられませんが、フランスでは当たり前のようにワインを注文するのだそう
そこでまたまた驚きなのが、フランスでは高速道路のサービスエリアの食堂でもワインが飲めるそう!
ただし、条件があるそうで、”食事と一緒にオーダーしなければならない”らしい。笑
運転する人はダメ、とかではないのです。笑
在フランス日本大使館のホームページにも、『0.50g/L未満のアルコール濃度であれば、うんてんをつづけることができてしまう』そう
いや、“できてしまう”って…笑
さすがワイン大国フランスです。笑
このようなおもしろくてためになる小話がちょこちょこ出てくるのもおすすめポイントです♪
すてきなおじさんたちに出会える1冊
『パリのすてきなおじさん』はさまざまなおじさんのすてきなお話が詰まった1冊です
本書全てを通して感じたこととしては、
- さまざまな国籍特有のさまざまな経験を通して得た多様な考え方がある
- 日本とは違う、海外特有の自由でおおらかな考え方がすてき
- ”自分”の芯を貫いている
ということです(*´-`)
本当の本当に買ってよかった!わたしのお気に入りの1冊です!!
ぜひぜひお手に取ってお楽しみください♪
ここまで読んでいただきありがとうございました!
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